●達人TOP●まちを元気にする達人への思い●達人一覧表●達人エントリー●達人のStaff●達人の輪

<<< まちを元気にする達人たちFILE007 早船福太郎 >>>
 
 

 
魚のビクなどの小物から、犬やらいや垣根といった大物まで、私たちの日常生活には、意外と竹製品が多い。竹職人の早船さんのもとには、「竹でこんなものはつくれませんか?」といった相談も寄せられるそう。そして最初は、苦労の連続。でも試行錯誤を繰り返し、結局は早船さんカラーの竹製品として、そんなリクエストに答え続けている。
最新作は、“江戸開府400年”関連のイベントで、浅草寺本堂裏に建てられた平成中村座を囲む竹垣。長さは7軒(13m近く)にもなる超大作で、まるで江戸時代にタイムトリップしたような感覚を覚えさせてしまう作品の風情からは、早船さんの職人魂が感じられます。
 


■受注から作品づくりまで
ひとくちに竹といっても、真竹、モウソウダケなど種類は500種類以上ある中で、強度や太さなどの性質から、早船さんの作品は、一番扱いやすい真竹が95%以上を占めている。発注を受けて、作品の出来上がりを想像しながら、設計図などはひかず、長年の勘で作業を進めていく。職人である以上、受注生産という姿勢を貫いている潔さは、理想の働き方として羨ましくもある。
「忙しいときは、2、3件並行して仕事をすすめるけれども、一つ一つの作品を大切にしていきたいので、必要以上に受注は受けません。仕事の優先順位は、一番急がれている仕事からですね。」作品づくりに見るそんな職人気質がとても明快で爽やか。そしてそんな姿勢が、完成品の質にも影響しているはず。


■細かい仕事は忍耐力。あとは好きかどうか。
「新橋演舞場からの依頼で、市川猿之助主演のスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』で使われたススキの葉を竹から作るという仕事がありました。長さ75mm、厚さ0.3〜0.4mmの竹製ススキは、そのたわみ具合はもちろん、風にそよいだときの音までもが本物に近い。2ヶ月間で7万枚のススキを作りましたが、色つけを含めて大変な作業でしたね。」
ススキの葉は、1本の真竹から10枚しかとれない(表の皮と内側の皮は使わない)という大変細かく忍耐力が必要な作業。「でも実際に舞台でススキが本物のようにしなり、音を出しているのを見ると、竹に対する思いもより強くなってきます。」と早船さん。
いまでも一年のうち半分近くは、劇場や舞台からの依頼だそう。必然的に、竹をどう切ってどう見せれば、求められているものに近づけるか、ということを考えている。竹の研究は、竹職人を続けて57年たった今も続けている。
   

■ちょっとした遊び心も忘れません!
「商品の差別化といっても基本はやはり、技術の確かさ、精密さです。竹垣の骨組みづくりでさえも、丁寧に対応していかないと。よい作品は、そんな丁寧で愛情のこもった作業から生まれるのではないでしょうか。」と、伝統的な竹製品を見守っていくために必要な心得を語りながら、一方で時代の流れにも対応する工夫を考えているという。最近では「オブジェとしての竹製品」の発注が多いので、見た目やファッション性に軸が移行しつつある。本来とは違った用途で使われる袖垣(玄関の脇にある小さな垣根)などを見ていると、複雑な気持ちはする。でも何か新たな使い方も、お客さんの要望であれば、「それも仕方ないか」と微笑みながら、時代にマッチするような工夫もしっかりと考えている。

「若い人にはアピール度は低いと思うけど・・・・・・。」と見せていただいたのは、一風変わった垣根。クリの丸太を支柱に使い、棕櫚縄(しゅろなわ)がポイントとなっている個人宅の垣根。クリの樹は丈夫なので、多少扱いにくくても垣根には優れている。幹の湾曲具合もデザインのひとつとして見ていて楽しい。時間とともに竹やクリが飴色に変わっていくところも、作品のポイントだそう。外見だけでなく、長い年月をかけて発生するような、素材の特長を生かした作品づくりに、早船さんの粋な心遣いが感じられる。

「今できることを今の技術で、そこに少しの工夫を加えて、新しくしていくのです。」
そんな早船さん流の作品作りに、がんばりすぎず、でも妥協はしない、理想のライフスタイル像を見た気がした。
取材/文 佐藤有香
 
映像資料はこちらから   映像(1)映像(2)映像(3)
 

早船 福太郎(はやふね・ふくたろう)

職人歴57年の大ベテラン。お寺の垣根から個人宅の袖垣、個人の趣味で依頼された魚のビクなど、あらゆるものを竹で仕上げていく。出来上がりイメージから作り方を反芻していく過程が楽しいので、新しいものにチャレンジすることにも意欲的。