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漆の達人/木下稔夫
漆の達人/木下稔夫
 

 

千代田製作所の宮岡社長が、実験にお誘いして下さった。なんでも「漆器」を給食食器として、誰でもが気軽に使えるようになる漆器作りの技術を研究しているらしい…。小雨の降る中、東京都立産業技術研究所に行かせて頂いたのですが、そこでは凄い技術が隠されていたのです!

■ 東京都立産業技術研究所とは?
様々な分野のプロフェッショナルで構成されていて、技術相談・工場実地技術相談・分野別技術支援・アドバイザー派遣・受託事業・ものづくり支援などを行っています。木下さんは、その中で製品技術部の製品化学技術グループの工芸技術の中で、塗装という分野において、素晴らしい研究をされている方です。特に「漆器」には特別な思い入れがあるそうです。


■ 仕事との出会いは?
大学時代から「塗装」が好きで、「漆(うるし)」を研究していました。(お聞きした時は、変わった事に興味を持つ人もいるんだなぁ…と心の中で思っていた。でも、次の瞬間この考えはさっと消えてしまった。)木下さんは、「最初の勉強というか授業というか”塗る”事から教えますよね。色を塗ったり文字をなぞったり、みんな塗ることから覚えていくんですよね。」と言われてハッとしました。本当、そうですね!どんどん日本文化の持つ「漆」の素晴らしさに惹かれていかれたそうです。

「漆塗り」の工程
【「漆塗り」の工程(右の木の面から左へと進む)】


 
■ 高級品で扱いにくい「漆器」というイメージを変えたい!
今の時代、誰に聞いても「漆」といえば「高級品・水に付け置き出来ない・扱いにくい」等、色々と日常から遠ざけられてしまっています。高級な工芸品となってしまい、まさになくなってしまいそうな「漆」文化を、木下さんは取り戻そうと奮闘されているのでした。現在研究を重ねた「漆器」は、プラスチック製品並みに水にも強く割れにくいモノへ変化を遂げました。というのも、特殊な技術で圧力をかけたり焼いたりし、漆の強度を強めたと言う訳です。なんと、今取り組んでいるのは電子レンジにも耐えられる「漆器」の技術まで来たそうです。

実験過程について話す木下さん ←【実験過程について話す木下さん
左)宮岡社長 真中)安井社長 右)木下さん】


■千代田製作所との共同開発「光触媒」
「宮岡社長の塗装工具というのは、本当にすごいんです。光触媒といいましてね…」と説明をして下さった。光触媒とはファンデーションや絵の具で使われている二酸化チタン(TiO2)に光を当てると、植物の光合成の様に触媒反応が起きて「空気がキレイになる」「バイ菌をやっつけている」「汚れない」ビル外装タイルに使って大気汚染のない街づくり、ウォーターパーク<水路・噴水・遊び池>の水浄化やフリーメンテナンスで抗菌・防臭・ホルムアルデヒドを分解して快適空調が得られるという。

何となくわかったような気がすると言ってるうちに、窓を見せて頂き一目瞭然!光触媒を塗った窓とそうでない部分の比較をしてみました。なるほど全く違ったのです。外には大きな樹木があり、樹木は季節の変わり目には樹液を放出するらしく、塗っていない窓は当然汚れていましたが、光触媒を塗っている窓はなんとガラスがあるのも感じさせないくらいの透明感でした。こうやって塗る工具の技術向上と、塗ってみてどうかという経過実験を重ねて商品開発をしているのでした。

【新たな工具で塗装実験をしている様子】→ 新たな工具で塗装実験をしている様子

■ もっと知って欲し
公的な施設ですから、もっと広く皆さんに知って頂き利用して欲しいです。年に一回は一般公開の日もあり、その他学生等の見学もできるとのことでした。塗装は地味なので、派手と言っては何ですが、雷を機械的に起こせる実験や、無響室(反響音の無い部屋)などもあります。


■ 夢はなんですか?
「やはり、今研究している「漆器」ですね。これが小学校などに食器として使って貰える日が来るのも夢じゃなく現実に近付いてきました。」と、嬉しそうに答える木下さんを見ていると、夢を追い求めて突き進み形になることの素敵な瞬間を、少しだけお裾分けさせて頂けたような気分になりました。

取材・文 福田 理恵


 
木下 稔夫(きのした・としお)

○昭和30年6月24日生まれ
○職歴:15年(2003年12月現在)
○役職:東京都立産業技術研究所  
      製品技術部 製品化学技術グループ 主任研究員
○〒115-8586 東京都北区西が丘3-13-10
○TEL:03-3909-2151 FAX :03-3909-2590
○HPアドレス:http://www.iri.metro.tokyo.jp/