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元祖・束子の達人/西尾商会
元祖・束子の達人/亀の子束子西尾商店
 

 

北区は滝野川、風情漂う町並みをしばらく歩いてゆくと、なんとも趣深い建物が現れた。タイムスリップでもしたのかと思うほどレトロな造りだ。聞くと、なるほど築大正11年、震災にも耐えた歴史ある建物らしい。昔の東京というのはこういう佇まいであったのだろうか。今回は、この建物とともに歴史を重ねた、株式会社亀の子束子西尾商店をご紹介したい。企画部、濱田久美子さんにお話を伺った。
西尾商店
【株式会社 亀の子束子西尾商店】


 
■亀の子束子誕生の秘話
台所用具の素材の進化で見かけることが少なくなってきているとはいえ、洗い物には欠かせないのが束子。実は、この楕円形の亀の子束子を発明した人物こそが、亀の子束子西尾商店の初代社長、西尾正左衛門さんなのである。明治40年の創業当時からおよそ100年間、束子を作り続けてきた亀の子束子西尾商店は、まさに束子業界の老舗中の老舗。
今では、当たり前のように使われている亀の子束子だが、発明された頃は、洗い物といえば、縄をまとめて縛ったものを使っていたというのだから、亀の子束子の出現は画期的だったに違いない。

実は、この世紀の発明品とも言える亀の子束子が発明された背景には、意外なストーリーがあった。元々、西尾商店は靴ふきマットの製造が専門であり、最初は売れ行きもかなり良かったが、足で踏んで潰れてしまったものが返品されて山積みになっていた。その内の棒状の切れ端を、ある日、初代社長の奥さまが、丸めて洗浄道具として使い、洗い物をしていた。それを見かけた初代社長が、これは商品になる、とひらめき発明したというのだ。こうして、亀の子束子が誕生したのである。
今では、束子の代名詞となっている『亀の子』。発明したときに、形を見て「亀に似ている」と。洗う道具というのは、水にも縁があるし、亀は縁起が良いということで『亀の子束子』と初代社長が命名したという。実は無類のカメ好きでもあったとか。亀束子ではなく、子供の子をつけたのは親しみやすいというところから。「束子」という字も漢学者に相談し、束ねる子と書いて「たわし」と読んだ。今や、西尾商店のれっきとした独自のブランド名として、商標登録もされている。それ以来、実に一世紀もの間、束子のトップブランドの地位を守り続けてきたのだ。
創業して約100年というのも驚きだが、なんとこの束子、発明当時からずっと作り方が変わっていないという。


■ 束子の原料
丈夫で長持ちする亀の子束子作りに必要不可欠なのが、厳選された素材。比較的、毛が柔らかい束子には、中国産の棕櫚(しゅろ)を使用し、固い束子用には、ココナッツヤシからとれるパームと呼ばれる繊維をスリランカから輸入している。一本の木から年間100個以上の実がとれるという安定した供給力を持つ。それゆえ、パーム性の束子の生産量が最も多い。その原料をスリランカ工場と、新潟・和歌山の工場で束子に仕上げていくのだが、その工程は未だに機械化されていない。なんと職人が一個一個手作りしているのだ。
年間、数百万個を生産するという亀の子束子が、今でも手作りで作られる理由とは一体何なのだろうか。


■ 先代社長のこだわり
昔から、職人さんが一粒ずつ作り、検査制度を行う。作るのは一日何百個、何万個とあったが、使うお客様は一粒ずつだということ。それを大事にしていこうというのが、初代からの言い伝え、こだわりである。
そこで、明治時代から受け継がれてきた亀の子束子の職人技を、実際に見せていただくことになった。

<〜作業工程・製品紹介〜>

■ 様々な創意工夫
20代で家業を継がれた初代社長、西尾さんは、「成功」という思い強き野心家でアイディアマン。今でこそ、束子といえば亀の子、亀の子といえば束子。しかし発売当初は売れず、店奥に積まれていた。そこで、商品が目立つように20個、甘柿のように連ねて店頭にぶらさげてもらった。すると「これは何ですか」とお客の声がかかり、徐々に広がっていったのだ。ところが売れてくると、今度は特許に構わずニセモノが出回った。裁判するにも色々と経費はかかる。では、ブランド力を高めよう、と商品の差別化を図る。ブランドをはっきり打ち出すことをテーマに様々な戦略をうった。まず、知名度を上げるために、

1.宣伝広告 に力を入れた。当時はテレビもラジオもない時代。あるのは新聞と女性雑誌くらいだったが、こうして名前を日本中に浸透させた。次に重要なポイントになる、

2.品質の安定 内から厳しく品質で勝負する。検査工場では、棒の束子の状態、仕上げた状態で、二度に渡って検査するという徹底ぶり。ここまで検査するメーカーは他にそうないだろう。

3.折り包装 ある日、初代は夢をみた。束子をなにやら紙で包んでいる。「これだ!」
夢のヒントをきっかけに、大正8年から昭和33年まで、折り包装を始めた。商品名も明記できる。昔の薬屋さんや小綺麗な雑貨屋さんでも他の石鹸などと一緒に並べてもらえる。包装を始めた頃の亀の子束子がこれだ。平たい紙をピンセットで両側とも折って貼る。手間がかかっている。これで一段と高級感が出て、家庭の主婦にも受けたのだろう。
亀の子束子、包装第一号
現在の包装はこの形。商品陳列もこれで色々なところに出している。 現在の包装

 
■ 今後の展開
具体的には、マッサージアイテムや、ガーデニング用キャラクターを増やしていく。
だが、やはり一番は、従来の製品をより使っていただくこと。時代遅れであるかもしれないけれども、その中の価値ある実用製品でありたい、と語る濱田さん。

生活に密着した製品を作り続ける亀の子束子西尾商店。
時代が変わっても、常に良質の製品を消費者に提供し続けるという姿勢は、技と共に受け継がれてゆく。
 

取材・文 辰巳 まな


 
株式会社 亀の子束子 西尾商店    

○〒114-0023 東京都北区滝野川6-14-8 
○TEL:03(3916)3231/FAX:03(3916)5959
○HPアドレス:http://www.kamenoko-tawashi.co.jp