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万華鏡の達人/伊藤美津江
万華鏡の達人/伊藤美津江
 

 

北区は富士見銀座の一角にある「まちなか工房」を訪ねる。今日はここで、万華鏡作りの体験教室が開かれる。飛び入り参加で、しかも、本当に何もわからない私でも、はたして万華鏡が作れるのだろうか。不安を抱いたまま、その達人の技を伝授してもらうべく、いざ、「まちなか工房」へ…。


■ 伊藤先生と「万華鏡」との出会い
伊藤先生が、初めて万華鏡の世界に触れたのは、ハワイの地であった。それは、ハワイの片田舎、細々と営む小さな古いお店の片隅に、ケースに納められていた。
「まるで、私を待っていたみたいに、そこにあったの…」 
オイル重鎮型の万華鏡は初めてだった。覗き込んだ瞬間、この万華鏡に一目惚れした伊藤先生は、その後、深く万華鏡の神秘の世界に引き込まれていった。
ご自身で作り始めたきっかけは、やはり素晴らしいものは数あっても高いこと。購入した初めての万華鏡の価格は1万3000円。今でもそんな値段で売られているものは多いそうだ。7年前、通っていたステンドグラスの教室が二子玉川にあり、そこの万華鏡展示会で、万華鏡の第一人者・山見先生と出会い、一番弟子となる。


■ 万華鏡作家として
「個展などで販売はしないのですか?」という問いに、万華鏡作家だなんてまだまだ手前、本業は主婦です、と微笑む伊藤先生。展示会で値段をつけて人にあげるほどの力はまだないと思っているという。しかし一番の理由は「自分の愛情を込めた作品が離れていくのが嫌だ」と。全て非売品で出品する。最近の展示会としては、万華鏡クラブ内の、気の合う仲間が6人集まり、山梨で開催した「6人展」にて3点出品。3週間で約2500人の来場があった。今まで作製された万華鏡は、全部で30点ほどある。作品のホームページはないが、実物や写真はあるそうだ。是非お家拝見したいです!という図々しいお願いに「是非、来てください。皆さんに万華鏡を作ってもらおうと思って、玄関を広げて、万華鏡展にしちゃったんです」
 
初めての作品:風車 ←【伊藤先生が初めて作った万華鏡】
最近の作品:気球 ←【最近の作品:気球(佳作)上から覗きます。先端部は水晶球を使用し、映像が球体で見える。】


■製作上、気をつけていること
鏡の部分になる、ガラスを切るのが一番大変だという。今日の教室では、既に先生の手によって切ってあった。2ミリのガラスで、とても薄い。ちょっと力を入れすぎると、ヒビが入ってしまう。刃のいれ加減が全て。まさにこれは職人の世界である。

「ガラスを切る神経は別なんですよ」一枚30センチ四方が1400円のガラス。一度で5枚ほど駄目にしてしまうことも。稼ぎもないのにすいませんと家族に思いながら、修行の為にお金かけるのは仕方ない、と。ご家族の方はというと、一生懸命モノづくりに励む母の姿に「幸せそうだ」と、応援してくれている。ご主人も、同じ万華鏡クラブの会員にしてしまったとか。一緒に万華鏡の話ができるから楽しいし、ガラスを買いに行ったり好都合な点も!ご夫婦での参加が多いという万華鏡クラブでは、仲のよい夫婦同士での素敵な繋がりも広がっている。


■これからどんな作品を作りたいですか
「どうしてこれが万華鏡なの?」というものを狙っている。からくりのような感じ。天狗のお面の穴をほじくって娘に怒られた、という話に皆、大爆笑する。今日発想したのはね、と話し始める伊藤先生。「ひまわりの花を広げて、真ん中から覗くと万華鏡になっている仕組みのもの。病気で落ち込んでいる人にプレゼントしたら喜んでもらえそう」 来年のテーマは「ひまわり」に決定したようだ。

「一人一人、感動の仕方は違う。感動するのも本能です」

先生の作品へのこだわり、とは「共に感動を生む」というところにあるのだろう。


■ 万華鏡の魅力「仲間の広がり」と「感動」と
自分の思いを形にできる反面、最後まで出来上がりがどうなるのか分からない。それが万華鏡のおもしろさでもあるという。失敗しながら作り上げていくのも面白い。楽しみがある。仲間にプロがたくさんいるので、長い期間をかけて、技を盗んでいこうかと。
何より嬉しいのは、万華鏡と出会って、一生付き合うんじゃないかと思える仲間がたくさんできたこと、と伊藤先生。
「何にも代えがたい宝です。万華鏡を感動する仲間というのは、同じもの(感性)を持っているから、何だって分かり合えるんですよね。私もここ何年かで変わったんじゃないかと思うくらい。素晴らしい機会を得ました。」
伊藤先生は、この感動を広めていきたい、と今後も色々なところで教室を開く計画をしている。

覗き込みさえすればそこに無限の美世界が広がり別世界を堪能できる。仕事を忘れ、ゆったりと落ち着いた世界を与えてくれる。それが万華鏡なのだ。ただの1分間でいい。4億回に一度しか同じ模様とは出逢えない。そんな奇跡を皆さんも一緒に体験してみませんか。



【万華鏡とは】
1.万華鏡の歴史
万華鏡は日本に古くから伝わる伝統工芸だと思っている人は多いだろう。ところが実はそうではない。1816年、ところはスコットランド、デイビッド・ブリュースター(Sir David Brewster)という物理学者が“Kaleidoscope”という名前で特許を申請したのが起源だという。灯台の光をより遠くまで届かせる為に鏡の組み合わせを工夫している最中にこの万華鏡を発明してしまったらしい。ちなみに“Kaleidoscope”は、“Kalos”=美しい、“Eidos”=形、模様、“Scope”=見るもの、というギリシャ語を元にした造語。
日本には1819年(文政2年)、発明後わずか3年にして国内でも製作開始、明治には「百色眼鏡」として親しまれ、更に改良されて「ばんかきょう」「錦眼鏡」とも呼ばれる。1891年頃(明治24年)流行し、いつのまにか土産物屋に郷土玩具として並べられるまでになる。日本の古い万華鏡は紙とガラスで出来ており、壊れやすく、又日本の湿気の中では残りにくい素材だったらしい。
1980年末、アメリカでは、美しい万華鏡を見直そうという運動が起こり、Cozy Bakerというおばあさんを中心に始められる。これがきっかけとなり、“Kaleidoscope Renaissance”「美しい万華鏡ブーム」が再び巻き起こる。現在アメリカで150人以上の万華鏡作家が芸術品を作り続けているという。日本でもこの万華鏡の美しさに惚れ込み、万華鏡を作る芸術家が増え始めている。


2.万華鏡の構造
「外側」(筒)素材はガラス・真鍮・木等が主。特に最初に目に付くところだけあって、作者たちがそれぞれの創意工夫・独自性を示そうとするところでもある。外観様々、見る人の目を楽しませてくれるので、覗き込むだけでなく飾っておくだけでも楽しめる。
「具」(見るもの)最も工夫を凝らす場所。自作する場合は選んでいる間が一番楽しい時間であったりする。ステンドグラス・ジュエリー・鳥の羽・ドライフラワー・ビーズ・おはじき等々、思いつく限りのどんなものでも入れて楽しむことができる。車輪を回転させることで、色々な模様の組み合わせを楽しむもの(先生の作品)

*先端部にビーダマをつけ、回転させて楽しむもの

*先端部にオイルを充填し、オイルの動きによる不思議な模様を楽しむもの

「内側」(鏡)万華鏡の心臓部。鏡の質や組み合わせ方で見え方が全く違ってくる。例えば土産屋はプラスチック性の鏡が主。大人向けには表面反射鏡がお勧めだそうだ!鏡の組み合わせ方も、2枚使用でV字型、3枚、4枚で張り合わせる方法がある。

今回の体験教室では、「具」は(ウ)のオイル、あるいは昔ながらのドライ、「内側」の鏡はオーソドックスなタイプの3枚を使用した。これは鏡同士で反射を続けるために、一度万華鏡を覗き込むと、無限にシンメトリックな映像が視野一面に広がる。
鏡を合わせる角度を変えることで見える映像は様々に違ってくる。

取材・文 辰巳 まな


 
伊藤 美津江(いとう みつえ)