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陶芸の達人/酒井智子
陶芸の達人/酒井智子
 

 

時に、アーティスティックな作品に没頭する。
時に、とてもシンプルな、つかい勝手の良い作品だって作る。正反対の創作スタイル。
ある時は「アーティスト」で、またある時は「先生」。
彼女にとってのものづくりとは、本来「自由でいてわがままである」ことだ。
「純粋に『陶芸』を楽しみ続けながら、ステキなおばさんになりたいの…」。
どこか懐かしい、土の香に包まれながら、酒井さんのお話を聞いた。


■陶芸家へ…
「秘密の基地」。公園の隅や団地の影に、隠れ家の様な小屋を作ったりした子供時代の記憶がある人は少なくないだろう。
酒井さんもそんな思い出を持つ一人だった。
「なんでも‘つくる’ことが好きだったの…。絵は苦手だったけど…」
陶芸は、何かのTV番組でみて漠然と気になっていた。高校を卒業する頃には、趣味でやっていきたいと思うようになる。
芸術系ではない大学に進むつもりが、美大へ進む友人に声をかけられたのきっかけだった。
「大学でそんな勉強ができるとは知らなかった…」
陶芸の工程
【陶芸の工程】


大学で陶芸を学んだ酒井さんは、卒業後の道として「産地」ではなく「東京」を選ぶ。流通や仕事の面で、多くの陶芸家は「産地」へと向かうのは一般的である。
「やはり東京の文化にこだわりがあったんです。映画もたくさんみたいし、音楽も大好きだし…、陶芸一本の生活は自分には似合わないと感じて…」
陶芸家iとして個人でアトリエを持ちその活動を続けるのは、とても大変なことである。
酒井さんは、当初アトリエに勤め、そして自身で教室を開くに至った。
「今までは作って売る、という感じでしたが、作って見せるというのもいいかな、と。…それが東京にいるメリットではないかと」

土練り
【土練り】

■陶芸教室から…
「自分が先生に向いてるなんて、ちっとも思ってなかった…」
ある日、子供の為の造形教室に参加した。
「子供にアプローチする中で、色々な発見があったんです。気づかない内に陶芸について頭がガチガチになってたんです。それを子供たちが本当に自由に壊してくれたんです」
面白く陶芸をやってもらうにはどうしたいいか?
どう陶芸の魅力を伝えればいいか…?
どう生徒の作りたいものをカタチにしてあげられるか?
「陶芸についての勉強に、終わりがなくなってしまったんです」
個人としての創作以外で陶芸に向かうなか、問題と課題が次から次へと溢れ出す、またそこから新しい創作のヒントも生まれた。
「教室をやっていなければ、陶芸家としての今はなかったかも(笑)」
アーティストとして、そして先生として…
そのどちらも、酒井さんにとって必要なスタンスであるのだった。


■「プロ」であることと、「アマチュア」であること。
プロであることは「そぎ落とすこと」
アマチュアであることは「どんどん詰め込むこと」。
どちらがいい悪い、と言った話ではない。酒井さんはそのどちらも大事だと言う。例えば生徒さんたちには、思い切りやりたいように創作するよう促す。

絵付け 絵付け
【絵付け】

酒井さん自身は、その二つの間でなんとかバランスを取ることに今でも苦心を続けている。
売れる作品=自分の作りたいもの、ではない。
「自分でご飯を作り、器を使うようになって初めて気づいたの…。あ、私の器って使いにくい(笑)」
しかし、使いやすく売りやすいものばかりではつまらない、逆に自分が満足するだけの創作だけやっていても続かないのだ。
「シンプルな作品、そしてごてごて(詰め込みの意)した作品の間で頭の中が二つに割れているの(笑)でも、両方勉強なのです」
シンプル作品 ごてごて作品
【シンプル作品】 【ごてごて作品】

酒井さんのその話は、芸術・表現に携わる人間の普遍的なテーマでもあるのだろう。
それを自覚し「アート」と「商品」の間で酒井さんは必死に、また素直に「ものづくり」と向かい合う。
「今が一番難しい時期かもしれない…、でも『ものづくり』とは、本来‘わがまま’なこと。自分の好きでやっている、ということは絶えず忘れずにいます」

柚がけ 本焼
【柚がけ】 【本焼】

■夢…
「すてきに年をとって、ステキなおばさんになりたいの。自分の創作もそれに平行していけばいい…。若い時には通らねばいけない道があって、それから現実を背負う世代になる。でも、またそこからが始りで、50・60代になってもまた新しく始められるような自分にとっての『陶芸』がある。そんな感じでステキに年を重ねていければ…、そう!ミックジャガーみたいにいつまでも!!」
 
「陶芸」と「自分の人生」にひたむきに謙虚に語るお姿が印象に残る。
そして、なによりも元気だった。酒井さんの、真剣に素直に「ものづくり」に立ち向かうその姿勢が、いつまでも新鮮で溌剌としていられるエネルギーの源であるに違いない。
完成
【完成】
 

取材・文 栗山 宗大


 
酒井 智子

○陶芸教室 サカイ工房
○東京都北区西ヶ原2-40-12 1F・2F 
○TEL:03-5974-3868
○HPアドレス:http://www.bface.net/shop/sakai/index.html