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金属製医療器具の達人/村田敬一
 

 

村田さんは大手メーカーではコストの面で対応が難しい、量産できない専門の金属製医療器具などを大学病院や検査センターのために設計、製作している板金加工の達人である。もともとは真鍮や銅などで作っていた医療器具業界は、昭和40年代の硬くて錆びにくく燻りにくいステンレスの登場とともに、一気に変わったという。村田製作所もそれまでの真鍮での大量生産から、ステンレスでの発注された単品をコツコツ作っていく生産方式に変え、医療用器具は発注側から高い評価を得る。しかし現在は更に、医療の現場での検査のシステムが変わり機械化して、金属以外での消耗品を多用するようになり、手作りによる医療器具も最近では段々減ってきているという。

村田製作所 作業場
【村田製作所】 【作業場】


■この仕事を始めたきっかけ
「有限会社 村田製作所」は村田さんの父が昭和22年に創業。父が昭和30年に亡くなってからは、母の弟の堀江政雄さんが引き継ぐ。長男だった村田さんは既に幼い頃から技術者になるのを宿命のように感じていたという。そして18歳から半ば強引に手伝わされ、外には一切修行には出ず、親方の堀江さんの元、修行を積むことになる。堀江さんは自分の子には継がせる気はなく、村田さんに期待した。初めは戸惑いながら仕事をしていた村田さんも所帯を持ったときから本気で取り組みはじめたという。

図面と写真
【図面と写真】

■ 作業工程
1. 医療用機器メーカーから注文を受ける。
2. 製品の用途などを聞いて、図面を書き、寸法を出す。
3. 用途に合わせた板金をシャーリングで切断、穴を開ける、絞る(角を付ける)、溶接した後、研磨で仕上げる
因みにこれら加工の作業は一個ずつ作るのではなく、注文以上の数を一斉に作っていくのである。
    
          
■現在の状況
若い頃は近くの大手の工場で板金加工の作業などを掛け持ちで行ったり、バブルの頃は残業の連続で催促をされても生産が追いつかない時代だったのだが、今は正直、仕事を待っている状態だという。長年の付き合いからお得意さんも多いのだが、一つの商品に根を詰めて作るから、捌けるまでに時間がかかり、なかなか商売としては難しくなってきているのである。しかし商人や問屋なら商売や仕事の内容を変えられるが、職人は不景気になっても、なかなか仕事内容を変えられないのが実情である。
 
染色カゴ立て ガートルのワークとふた
【染色カゴ立て】 【ガートルのワークとふた】
ガラス管用のクランプ 角バット
【ガラス管用のクランプ】 【角バット】
医療薬品用のスプーン 【「医療薬品用のスプーン」
叩いてアールを付けて、スプーンの形にする】
■この仕事で一番難しい所
金属と金属を接合する技術には3種類あり、簡単にはハンダ付けで、更に強くロー付け、一番強力にはアルゴン付けがある。このアルゴン付けはステンレスやアルミなどを溶接する時に主に使うのだが、薄物のアルゴン溶接が一番難しいという。
あと常に受注された業者からクレームが来ないようにと意識している。毎日が同じ仕事ではないうえ、種類もとても多いから、根を詰める職人はよく勘違いを起こすという。また一つ一つ手作りのため、例えば10個の注文を受けても12、3個と余分に作り、その中から10個を選んで納品しているのである。

色々な金属 【真鍮、銅、アルミ、アルマイト、ステンレス】

老舗の店でも潰れる時代で、医療器具の製造は大手メーカーに取って代わられ、職人の技術はどんどん廃れてきて、職人も随分、減ったという。村田さんにも後釜はいないから、自分の代でこの会社も終えるつもりなのだが、しかし例え息子がいてもやらせたくはなかった、何故なら技術者も時代の流れには勝てないからだという。日本の医療を支えた職人の技術も先の見通しは暗いのである。

取材・文 岡田 俊秀


 
村田敬一(むらた・けいいち)

○昭和22年 東京都北区生まれ
○役職:「有限会社 村田製作所」 代表取締役(2004年現在)
○〒114‐0004 東京都北区堀船2‐15‐11
○TEL:03-3914-1541/FAX:03-3911-5540