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<<< まちを元気にする達人たちFILE046 石鍋秀子 >>>
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久寿餅(くずもち)は手作りでの製造が難しく、道具も場所を取るので、現在は殆ど機械で作るようになり、手作りのくずもちを出す店は東京では少なくなってきているという。そんな中、石鍋商店では現在もなお明治からの手作りの方法にこだわり、いい材料を選び、大量生産をせずに一枚一枚にこだわって作っているという。今回はそんな頑固職人のお店の女将、石鍋秀子さんを取材しました。
■この仕事で最も大変だった時期 石鍋さんは物心をついた時から店を手伝っていた。戦前は、子供は働いて当然という風潮もあり、長女だった石鍋さんは店の表の水まきや掃除から手伝い始め、やがて材料などの買い物から厨房の中へと仕事が移っていく。戦前は稲荷神社の周りにはたくさんの餅屋があったのだが、戦争でその殆どが潰れていく。石鍋商店も大戦中は男手がなくなり、苦労したという。戦争中は原料がなくなり、軍から支給されたこんにゃくの粉ぐらいで、商品はこんにゃくや寒天ぐらいしか作れなかった。石鍋さんは戦争中に結婚し、娘を出産するのだが、昭和19年には強制疎開させられ、店は休業に追い込まれてしまう。戦後、昭和22年に掘立て小屋から始め、徐々に古い道具を集めて、再びこんにゃくから始める。給食でこんにゃくを出したりしたが、配達もしていたので大変だったという。時には赤ちゃんを背負って、店の配達品を乗せたリアカーで坂を上がったりもしたという。そしてやがて戦後の好景気に乗って、順調に売り上げと評判を延ばし、現在に到る。しかし現在も機械を使わず、手作りのため、力仕事であることには代わりはないという。
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| ■石鍋さんのこだわり 石鍋商店のこだわりはまず、道具から始まるという。貯蔵のための樽は木樽にこだわり、他もステンレスを使わず、竹や木など昔ながらの道具を使い、ときには道具を作ることもあるという。くずもちやところてんは江戸時代からの、あんみつはできた明治からの昔ながらの手作りの味で作っている。材料も厳選された地方の物しか使わない。くずもちを作るためには貯蔵で2年ほどかかるので、これだけいい道具といい材料でないといい物は作れないという。酒まんじゅうも夏の暑い時期は作らず、他の時期も手作りのため、あまり一人のお客さんに大量には売らないという。ちなみに酒まんじゅうも昔ながらの製法で作り、次男が和菓子の学校の学生だった頃にその技術を披露したときは講師まで驚いたという。 |
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■くずもちへの思い 石鍋さんにとって、くずもち程、作るのが難しい物はないという。同じ作り方を毎日していても、実は微妙に味が違ったりするからだという。特に難しいのが貯蔵期間であり、期間が長いと硬くなりすぎ、短いとしまらない。また上と下では密度が違い、なかなか平均させるのもむずかしいのである。現在でもお客さんに出す前の検品は石鍋さんが行っているのだが、このくずもちの検品も10年近くやらないと判断ができないのだという。お客さんにも大きな物よりは小さい物を勧めるという、なぜなら長く置いておくと味が落ちるからであり、少しづつ買って新鮮なままおいしいうちに食べてほしいからである。石鍋さんは売りたくないのではなく、いいものだけを売りたいのである |
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■石鍋さんの今 現在は店の検品など、重要な仕事をする一方、「北区史を考へる会」に所属し、北区の特に王子の歴史について勉強、研究文などを発表している。王子は歴史のある町で、戦争で焼け野原になったりはしたが、古くからの行楽地である上、日本初の工業地帯であったりもする。石鍋商店は王子稲荷神社との関係も深く、石鍋さんは現在も王子稲荷講役員などもしているため、テレビや雑誌などにお稲荷さんなどについての取材などに答え、地元を活性化させようとしている。また昔から絵が好きだったのだが、現在も発表する文章には絵も添えることが多く、浮世絵なども勉強している。お稲荷さんが盛んな時は浮世絵なども盛んで、写真のない時代の変化を絵で感じることができ、北区の歴史の研究になるという。現在もなくなるかもしれない近隣の何気ない美しい風景を写真に撮って残そうとしているのである。
取材中も精力的に店の仕事をこなし、お客さんに対応しながら、店やくずもちの資料を見せるおばあちゃんはまた王子に産まれたことを誇りに持ち、地元の宣伝マンのようにもなっている。様々なメディアでも石鍋商店や石鍋秀子さんのことは今でも取り上げられている。大好きな浮世絵に囲まれた店で話すそんな石鍋さんは、とても80歳とは思えない話好きの元気なおばあちゃんでした。 |
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取材・文 岡田 俊秀 |
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