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  文字書きの達人/菅沼俊雄
文字書きの達人/菅沼俊雄
 

 

先日、北区の富士見銀座内にある「まちなか工房」にて、提灯に文字を入れる体験会が行われた。講師としていらして頂いたのが、菅沼俊雄さんである。十条に生まれ、十条で育った菅沼さんにお話を伺った。

 
まちなか工房の提灯を手にする菅沼さん
【まちなか工房にて】

■ この仕事を始めたキッカケ
お父様が昭和3年4月に「菅沼提灯店」を起業され、菅沼さんも学生の頃から提灯に文字を入れる手伝いをしていた。高校を卒業してから後を継ぎ、職歴は40数年になるという。


■ 苦労したところ・難しいところ
「何をやっても、難しいなぁー」と、はにかむ菅沼さん。
練習、練習の毎日で、実際に仕事をしてやっと一人前になるという。
字体は初め、親方が書いたものを真似して修行を積んだ。コツを掴み、ある程度すると自分の字というのが分かってくる。親方が一緒でも、お弟子さんの字はそれぞれ違うのは当然のことで、自分の字を確立するまでには、相当な時間と修行が必要なのだそうだ。


■ 魅力
お客様のニーズに合わせ、提灯の大きさや字体を変えていく。
それを見て、お客様が喜んでくれることが最大の喜び。
菅沼さんは、提灯の他にも看板や布に文字を書いたり、各種注文に応じている。
祝賀の看板    のぼり
【祝賀の看板】 【のぼり】

結婚式の提灯
【結婚式の提灯】

「フリーの字体の場合、自分の字の魅力を最大に出さなければならないよね」と笑顔で答えてくれた菅沼さんの作品は、人を惹き付ける力がありオリジナリティに溢れていた。



■ 製作の手順

ものによって手順が違ってくるそうだが、今回は私が実際に体験した手順をご紹介しよう。
1) 木炭を使って提灯に下書きをする。(木炭はウェス布≠ナ擦ると消える)
2) 文字を水性絵の具で、提灯に書いていく。(一気に書いてはいけない、丁寧に)
描く
*これが至難の技*

3) 文字から7mm位離れたところに、提灯全体の色を塗っていく。(斑にならないよう、慎重に)
塗る
*絵の具が濃くても、薄くてもNG*

4) 乾かして、出来あがり。
集合写真
*提灯スマイル!*

■膠(にかわ)
膠とは、動物の骨から水で抽出した、不純なゼラチンのことをいう。
膠を水につけ、お湯で温めると柔らかくなる。柔らかいうちに顔料を入れて溶く、という工程を経て膠絵の具の完成だ。
今は、水性絵の具が主なようだが、納め提灯(奉納提灯)では今でも使用している。
膠は丈夫で長持ちするのが特徴。50年〜100年は持つようだ。
水性絵の具だと、そこまでは長持ちしない。何故なら、色が飛んでしまうからだ。
膠で固めてある墨は、今でも擦って(菅沼さんは「おろす」という)よく使っているそう。
「最近は100年持つ提灯の注文が減ってしまって、膠を溶くことが少なくなってしまった」少し寂し気な声で語っていた菅沼さんが印象的だった。


■提灯に会いに行こう
東京都北区に王子稲荷という神社がある。
お社の奥手には「願掛けの石」や「お穴さま」の見所がある。その建物の中には提灯が並んでいるのだが、それはすべて菅沼さんが納めているもの。その提灯の後ろには、いつ作ったものか年号が刻まれている。王子稲荷神社に行った際には、ぜひ菅沼さんが心を込めて作った提灯を見て頂きたい。
稲荷提灯
【稲荷提灯】


■ 提灯の今・昔
昔は提灯というと、どこの家にもあった。暗い夜道などには、欠かせない必需品だった。しかし、今はというと夜とはいえ、ネオンや外灯などの普及で明るくなって来ている。そんな中で提灯の需要は少なくなってしまったという。実際、私も提灯を目にする機会は、お祭りやお盆の時だけかもしれない。だが、そこに提灯がなかったらいかがだろうか。提灯は、インテリアやプレゼントととしても活躍し、私たちに暖かく優しい光を届けてくれる。そして、そこに書いてある文字・絵は、なくてはならない重要なものであるのだ。
取材・文 鎌田葉子

菅沼 俊雄 (すがぬま・としお)

○昭和16年11月25日 東京都北区十条生まれ
○菅沼提灯店
○〒114-0031 東京都十条仲原1-28-14
○TEL:03-3900-7824/FAX:03-3907-5829