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  豆腐作りの達人/江原靖幸  

 

江原さんのお豆腐は本当に、美味しい。「美しい味」・・・字のごとし。口にした時の私の喜びを、充分有名なお豆腐だが、もっともっと多くの人達にも感じて頂きたい!そして、この美しい味を作り出す江原さん御自身の魅力、すでに有名な人物だが、もっともっと多くの人達に知ってもらいたい!!そんな祈りで紹介したい私である。

お豆腐


■切磋琢磨
東十条商店街の中、駅から徒歩10分のところに、「とうふしょっぷエハラ」はある。主人の江原さんと奥様がいて、豆腐はもちろんのこと、湯葉やお惣菜、江原さんが考案されたおからドーナツなど、美味いだけではなく、経験と研究から生まれたさまざまな種類の食品が並んでいる。豆腐は、大豆から作られる。大豆タンパクに含まれる「必須アミノ酸」は、脳の活動に対して、非常にプラスの働きをする。素人っぽく言えば(実際私は素人なのだが・・・)、摂取することによって「頭が良くなる」のだ。しかし、豆腐の成分等のウンチクにせまって、ここで時間を取りたくない。はじめに書いた様に、このレポートでは、江原靖幸とゆう人物にせまりたい。江原さんは昭和24年に豆腐屋の倅として生まれた。公認会計士を目指し、大学に進学したとたん、先代の父が狭心症で倒れてしまい、江原さんは大学をやめて家業を継いだ。元気になった父の復帰後、「豆腐づくりは、豆腐屋はどうあるべきか?」とゆうことを日々父と話し合って仕事をしてきた。その追求の為に、二人は全国津々浦々の豆腐屋を行脚し、より良い味や技、保存方法などの情報収集をし、江原家独自、オリジナルの豆腐開発に身と心を注いだのだった。そして、共同体であった先代が亡くなった現在も、彼の美しい味の研究は、毎日つづいている。「自己満足で仕事をしたくないんです。味の好みは十人十色だし、舌は慣れると次の味を求める。そこにどう対応していくか、美味しいものを研究するのはメーカーの役目です」と、江原さんはおっしゃる。

おからドーナツ お豆腐&豆乳
【江原さん考案おからドーナツ!】 【お豆腐&豆乳(奥に・・)】
お客様と共に
【お客様とのコミュニケーション、大切です】


■多くの人達から生まれる江原さんの豆腐
そんな彼の日々の仕事からは、多くのアイデアや味の産物があった。「豆腐の風味の保存方法」をはじめ、数多くの特許取得にも繋がった。そして、父と共に、豆腐づくりのオートメ−ション化も開発した。日に、約1〜2万丁を製造する工場を岩槻市につくり、デパート、スーパーや生協に豆腐を卸し、手作りと変わらぬ美味しい豆腐を、より多くの人に食べてもらえる様にするための技術革新も、業績は大きい。『食べる人の事を想う』、彼のその気持ちがすべての原動力だ。江原さんは消費者にモニター協力を定期的にお願いしており、味覚テスト等を行っている。もちろん、店に訪れる買い物客とのやとりが要になっていて、「こないだ買っていった○○、美味しかった」、「○○、かたかったんだけど、まだ茹で時間が足りないのかしら?」などの声を聞く。江原さんは言う、「プロだからこそ答えられる事ってゆうのはあるし、それにどんどん答えていきたい。そして、そうゆう中で、逆にお客様に教わることが、本当にたくさんあります。それは私の研究のテーマにもなっていくし、パワーになるんです」と。どの質問の答えの中にも、お客さんとの交流を、本当に大事に思っている江原さんの姿勢が見える。「食べてくれる人がいるから頑張れるんです。苦労も苦労と感じずに目標に向かって、がむしゃらに頑張ってこられたのも、それがあるからなんです。」とゆう主旨の言葉が、何度も聞かれたからだ。父と全国の豆腐屋を巡った頃の話のなかにも、人との繋がりを非常に大切に思う江原さんの言葉が、私のなかに残っている。「分からない事や、知りたい事がある時は、素直に頭を下げて、教えて下さいと聞く。相手の胸襟に飛び込んでいけば、こちらの熱意は伝わるんですよ。そしたら相手も熱心に教えてくれます。そして、同じ気持ちを持った、頑張っている同業者に会うことが出来て、それは、これまでこの仕事をやってきたなかで、本当に随分励みになってきたんです」という言葉だ。お客さんへの想い、これまで力を貸してくれた人達への想い。それは、感謝だけでは言い尽くせないものなのだろう。そして、その全てが、美味しい、美しい豆腐をつくり出しているに違いない!


■なにはともあれ「美味しいんです!」
ざるごし豆腐 とうふしょっぷエハラ
【できたてホヤホヤのざるごじ豆腐】 【とうふしょっぷエハラの店先】

私は取材中、出来たてホヤホヤの豆腐を頂いた。湯豆腐ではない、完成したてゆえの湯気が、釜から立ちのぼる。四角く切られる前の豆腐の姿を、私は初めて見た。「おお!!」とゆう感嘆が思わず出た。その豆腐を、江原さんは釜からすくって器に盛って下さった。感想・・・言葉にするのが難しい・・・。とにかく・・・美味しい!!口の中が思いっきり幸せになっていく。柔らかいやさしい口当たり。大豆の素朴な、でもハッキリとした味。ただ単に豆の味がするのではなくて、‘オイシイ豆’の味なのだ。いくらでも食べられる。これだけでお腹がいっぱいになっても全然構わない!と思えた。江原さんのお話を伺っているだけではわからない、江原さんの「凄さ」「匠の証」は、全てここにある!この豆腐が、江原さんの語る言葉がカタチとなったものなんだ、と思った。この豆腐との出会いは、豆腐好きの私にとって、とてもありがたいものとなった。中国と、朝鮮半島から渡って来た豆腐。中国では、ザルに盛って売られてきた。豆乳に苦汁(ニガリ)を加え、杓子ですくって盛る。この昔ながらの加工法そのままに、江原さんは『ざるごし豆腐』というものを作っている。これは、おぼろ豆腐、ともいう。私が頂いたのはそれだ。そのままはもちろんの事、蒸してよし、焼いてよし、揚げてよし、和えてよしの、なんでも来いの最強豆腐だ。お土産に、このざるごしと、さしみ湯葉、生湯葉等を会社に持ちかえったが、食べた皆が絶賛だった。この喜びはもっと伝えていきたい。

作業場
【ここでお豆腐達が誕生します】


■『メッセージ』
江原さんには、人に伝えていきたい事がある。「つくる喜びを大事にして欲しい」という事だ。「食べる喜びを知っている人は多いが、それを調理する、つくる喜びを知っている人が減ってきている様に思うんです。出来合いのものを「ハイ」とテーブルに出すだけよりも、親が子のためであったり、誰かが誰かのために料理をするとゆうことは、そこに、人と人の気持ちの交流か生まれます。それは味の伝承であったり、体を気遣う愛情であったり、信頼関係であったり、『つながり』が育まれる。実際そうやって人は育ってきたんです。その喜びを、もっともっと知って、大切にしていってもらいたいんです」多くの人と出会い、そこから様々な事を学び、パワーにして生きてきた江原さんのこれまでの生き様があらわになった言葉、メッセージだと思う。それを実際に聞いた私は、「つくる」とゆうことを、もっと考えたいと素直に思った。

江原さんは、頑なに自分の味や技術を、抱える様に守っていくのではなく、食べる人達の感想や、他の人のアドバイスを受け入れ、よりよい食品を作り出そうと、終らない挑戦をつづけ、難しいところでもあるそのところを人生の課題とし、常に未来を見据え、そこに向かっていく。豆腐の開拓者、パイオニアだ。美しい味を生み続ける、まさしく豆腐作りの達人、ここにありき!
 

取材・文 宮本 亜紀


 
江原 靖幸(えはら・やすゆき)

○昭和24年8月21日生まれ
○江原商事(株)東十条店 社長
○豆匠えはら 東京都北区神谷町1-28-1
○TEL:03-3911-5884