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<<< まちを元気にする達人たちFILE059 政所健次郎>>>
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東京北区、北本通り沿いにあるマンションの一室。1999−2000年のグッドデザイン賞を受賞した「マーブルスタンド」の生みの親、大進興産株式会社の政所健次郎社長を訪ねた。
■冒険 政所社長は現在57歳。生まれも育ちも北区堀船。少年時代は、肋膜炎を患い、虚弱体質だったという。高校に入り、剣道部に所属。体を鍛えようと軽い気持ちで入ってみたら、そこは強豪剣道部。虚弱体質でこれといった運動もしてこなかった社長にはつらい日々だった。 ■起業 大学卒業後、父親が経営していた塗料卸売業の大進塗料に入社。1986年に2代目として後を継ぐ。それまで大手塗料メーカーの販売代理店をしていたが、塗料業界の再編成を期に、一人で新しい事業を起こすことを決意する。 ■経験 「大手の看板を背負っていたが、これがなくなると、自分一人の力が弱いものだと痛感した。」 新しい世界での奮闘が始まった。まずはアメリカ製の特殊な潤滑油を工場や自衛隊などに販売。少しずつ実績を積む。しかし、 「組織ではなく個人だとあまり相手にされない。」と限界を知る。 そこで次に手がけたのが、アメリカ製のハンドクリーム。自分でデザインしたチューブに入れ替え「ハンドマン」とネーミングし、自社のオリジナル商品として飛び込み営業を始める。東京北区の異業種交流会で紹介された企業などに販売。業績は飛躍的に伸びる。 「製品が良いものであれば売れる。少人数でも事業が可能だということが分かってきた。」 ■勉強 その頃政所社長は、パソコン習得の必要に迫られ、勉強を開始するが、ローマ字入力に四苦八苦する。この時閃いたのが「マウスキャッチ」。ローマ字仮名変換表を印刷した机に貼れる薄いシート状のマウスパッドである。この自社製品も電化製品の大手量販店に飛び込み営業をかける。これが即採用。自社製品第2弾も成功する。 ■発想 パソコン習得中の社長。パソコンを前にして、またある不便さを感じる。 「机に置いた書類が遠くて読めない。かといって、書類を左手で持ち右手だけで打ち込むのは調子が出ない。」 何かいいものはないだろうかと、書類を片手につぶやく。この時社長は、1枚の書類の表を親指で、裏を人差し指と中指で挟んでいた。親指に軽く力を入れると、紙は湾曲して立った状態を維持できる。 「親指の代わりになるものがあれば、手を使わなくても書類を立たせておける。」と思いつく。 ■ビー玉 「親指の代わり・・・。」相当不便さを感じていたのか、来る日も社長の頭から離れない。創作のヒントは、日常のいたるところに顔を出す。 知り合いの印刷工場を訪れた時のことである。作業工程の中でビー玉を利用しているのが目に留まる。 「親指の腹とビー玉・・・。大きさといいかたちといい、何となく似ている。ビー玉を親指、アクリル板を人差し指と中指に見立てて試作品を作ってみよう。」 毎週土日を利用しての「工作」が始まる。 量販店で購入したアクリル板をガスバーナーで溶かし曲げ、ビー玉を組み込む。,2,3ヶ月の苦心の末、不格好ながら試作品は完成。 「紙一枚から150ページぐらいの厚さまで挟める形状をたまたま発見したんです。」 使ってみると仕事の効率が上がる。 「絶対に売れる」と直感した社長は、早速行動に出る。 ■営業 通常、商品開発は、マーケティング調査、販路の確保があって始まるもの。政所社長は逆を行く。とりあえず作って、飛び込み営業をかける。 より消費者に近いところにいる小売店のバイヤーのほうが、マーブルスタンドの面白さを分かってくれるはずだと考えた社長は、大手量販店に飛び込み営業をかける。売り場の責任者に直接掛け合うと、ものの5分で採用が決まる。さらに問屋を紹介してもらう。 「最も大事なのは消費者の意見、次が小売店、問屋なんです。初めから問屋に持って行くと、小さい会社の商品は相手にされない上、売りやすい安価な値段設定にされてしまう。大手小売店の紹介となると、問屋の対応も違います。」 ■値段 値段設定をする上でも、消費者の意見を取り入れている。流行に敏感な世代の娘さん、その友人、奥さんに意見を聞き、当時のOLの平均的な昼食代に相当する、580円に設定した。 ■友人 「販路もない、製造の経験もない、秘密を守らなければならない特許取得前の製品を、誰にでも見せるわけにも行かない。そんな中、意見、紹介、協力してくれたのが、異業種交流会の信頼できるメンバーです。ど素人が商品開発できたのは信頼できる仲間のおかげです。」 ■煌き もう一つマーブルスタンドの特筆すべき点がある。購入するとお分かりいただけるとおもうが、すべてリサイクル素材でできている。本体のアクリルは、カメラのプラスチックレンズの再生品。ビー玉は昔同様、ガラスビンから作られている。 何もないところからの商品開発。今あるものから作った商品。政所社長の閃きが煌きに変わったもの。それがマーブルスタンド。 「作ろうと思って作ると、いいアイデアは浮かばないし、うまくいかない。」 次はどんな閃きが煌きに変わるのだろうか? |
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取材・文 三島 浩 |
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