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<<< まちを元気にする達人たちFILE065 西田良洋>>>
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錺とは、かんざしなどの金属製装飾細工のことを言う。ジュエリークラフトと言えば馴染みがあると思う。今回は貴金属装身具加工業、ニューコーゲイ株式会社の西田良洋代表を訪ねた。 ■上京 伊勢(三重県)で生まれ育ち、昭和41年、18歳の時に上京。大手メーカーから独立した職人さんの下に弟子入りする。6年ほどの修行を積み、独立。ニューコーゲイの前身である西田工芸を立ち上げる。 「修行中、給料は12500円。住み込みで3食食べさせてもらうんで、引かれて手取りが7500円だった。6畳2間に6,7人で生活してました。」 つらかった、きつかったなどと言う言葉は出てこない。ある職人は、こう言う。 「労働基準法というのは、徒弟制度を認めない。修行中の弟子にも給料を払えと言う。給料を払って働いてもらうんじゃなく、仕事を身に付けて一本立ちしてもらうんだから、払うどころかもらいたいぐらいだよ。」と。 西田棟梁(ご自分をそう呼んでいた)は、こういった昔ながらの職人の世界をご存知だからこそ、修行期間をありがたいものだったと胸に刻んでいるに違いない。 ■信念 出来ないと言うな。出来るにはどうしたらよいかを考え、出来る人がいるなら、教えてもらう、やって見せてもらう。出来る人にとって見れば難題ではないかもしれない。投げ出さないこと。これが信念。 *ジュエリー作りの工程 1、 デザインを見て分解する。(どのように組み立てていったらよいかを頭の中で考える。) 2、 地金(ぢがね)取り。(型を作る) 3、 ろう付け。(部品の接続) 4、 石のセッティング。 5、 研磨 大まかに言えばこうなるが、すべてこの流れに沿ってやるとも限らない。目の寸法でもって変えて行かなければならない。 ■目の寸法 棟梁の言う目の寸法とは、感性の目と物理的な尺度を測る目のことを言う。 「感覚的なものではあるが、我々には重要な技術の一つである。」 感性という技術。技術とは? 「技術は無限です。しかし現時点でこれで良いと言う技術はある。それは決して妥協ではなく、顧客の要求、流行に柔軟に対応できる技術のこと。これがプロの技術です。」たくさんのお金と時間をかけて、一つ作るのはアマチュアの仕事。 技術の話でもう一つ。「石をより美しく見せる為にカッティング技術がある。自然のものをより美しく見せる技術もあるが、人間が作る美しさは、自然が作る美しさには到底及ばない。だからこそ、なぜ木はこういう形をしているのか、なぜ魚にはひれがあるのか、自然に目を向け考える事が大事。」 ■五感 感性の目を育てるには、いったいどうしたら良いのかを尋ねた。棟梁は伊勢出身。幼い頃から、伊勢神宮を代表とする古い建造物、伊勢志摩国立公園などの自然の美しさの中で育った。この環境の中で感性の目の下地が培われたのだろう。 「大切なのは、いろいろな事に興味を持つこと。そこで常に五感を働かせること。見る、聞く、触る(体験する)、嗅ぐ(雰囲気を感じる)、味わう(完成させる)。たとえば食事。「君が29才なら、大体29000回食事をしたんだよ。(365日×3食×29年≒29000回)ただ食べ物を摂取するだけの動作で終わってたら、感性の目を育てる為の29000回ものチャンスを逃していたことになる。だから、一食たりとも無駄な食事はしてはいけない。」 ■食事 現在25名程のお弟子さんがいる。自分の経験から、お弟子さんに食事を出していると言う。「同じ釜の飯を喰う。ベテランも若手も、人間の初等の欲求から同じスタートを切って仕事に取り組む。そしてお互いが刺激し学びあう事が技術を磨かせる。それともう一つ。調理場からいい香りがしてくれば、食欲が湧く。食べる気が起きる。やる気、根気、元気、いろいろな気を動かすためでもある。」と。 作業場の一人あたりのスペースの確保や機材の充実だけではなく、人材育成の細やかな配慮が覗える。 |
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■棟梁の言葉 モノ作りの達人という取材。服膺しなければならない言葉をたくさん戴いた。 ・ あるがままの美しさを知る ・ 一食でも無駄な食事はするな ・ 気を動かせ ・ 出来ないと言うな など 学ぶ事が多すぎて、取材文が「伊勢や日向の物語(混乱していて訳がわからない様子)」になっていないだろうか。 謙遜もあるのだろうが、棟梁は「私は達人じゃないよ」と言う。「達人とは、服の仕立てにたとえるならば、ボロを縫い合わせて立派なものを作れる人。1のものを10に出来る人」 もっとお話を伺っていたかった。棟梁は錺の達人ではなくとも、私から見れば、人生の達人と言える。 |
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取材・文 三島 浩 |
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