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プレスの達人/青柳盛文
プレスの達人/青柳盛文  

 

量販店に、所狭しと並ぶデジタルカメラ。選ぶ基準は様々で、画素数や機能にこだわる人もいれば、軽さやデザインにこだわる人もいるだろう。消費者は貪欲だ。高い買い物であるから、どうしても妥協できない。
最近のカメラで目を見張るのが、本体のフォルムである。流線形のデザインが目立ち、より洗練された製品が数多く出ている。機械に詳しい人でなければ、デザインで購入を決めることもあるだろう。それだけ、見た目の第一印象は大事なのだ。
こうした美しいフォルムが生み出される背景には、職人さんの地道な努力と経験が必要不可欠なのだ。山陽プレス工業株式会社では、主に、カメラや携帯電話、MDプレーヤーの外観ボディーを製造している。今回は、技術者の青柳盛文さんにお話を伺った。


■日本を支える技術
青柳さんは、寡黙で、腰の低い方だ。そんな性格から、真面目さや、勤勉さが感じ取れる。中学校を出てすぐ、何もわからない中で就職した。それから、こつこつと仕事を続け、キャリアは50年以上になる。日本の製品は、世界でも定評があり、多く輸出されているが、これは、日本人の勤勉さがもたらした結果、と、社長の檜垣昌子さんは語る。檜垣社長は、青柳さんに信頼を寄せており、素晴らしい技術の持ち主、と絶賛している。
より良い製品を作るために、「大事なのは経験」と青柳さんは語る。ボディーに丸みを持たせると、紙や布と同じで、しわが出来るそうだ。しわ一つない外観を作るには、熟練の技が必要。こうした細かい技術は、経験を重ねることで、習得できるのだ。

【真剣なまなざしで作業を進める】


■安全へのこだわり
作業中に青柳さんが最も注意することは、安全性だ。工場には、大きな機械が並ぶ。気を緩めると、手を挟んでしまいそうだ。機械に近づくと、自動的に止まるようになっているものもあった。工場には、緊張感が漂っている。この空気は、安全へのこだわりと、作業への集中力から生み出されるのだろう。会社でも、安全教育には、特に力を入れているそうだ。


■環境問題への取り組み
新しいものを作るだけでは、人々を納得させることは出来ない現代。「使ったら捨てる時代」は終わり、「使ったものをいかに再生させるか」が課題となる時代に突入した。カメラの外枠は、すべてリサイクルされ、再び新しい製品に使用される。
「生活に余裕がある日本が、こうした取り組みをしていかなければならない」と檜垣社長は語る。食事や住居など、基本的な欲求が満たされていなければ、環境問題にまで頭が回らないからだ。それに加え、物が溢れる日本が、環境に対して真剣に取り組まなければ、地球に対して不誠実だ、という責任感もあるだろう。また、リサイクルだけでなく、特殊加工を施した金型を使用することによって、油を使わずプレス加工ができる、というドライ加工技術を、産学官連携で研究している。


■オリジナルの商品も
メーカーから注文を受けるだけでなく、名刺入れやお香たてなど、自社製品の開発にも、力を注いでいる。名刺入れには、北区の桜のデザイン。可愛らしい名刺入れが、持つ人の、ビジネスの幅を広げるきっかけになれば、という思いを込めて作った。メタルの名刺入れは数多くあるが、凝ったデザインや、パステルカラーのものは、見たことがない。淡い色を出すには、高い技術が必要なのだという。
 
【華やかな商品が並ぶ】


■女性の社会進出を応援
工場では、女性の技術者も何人か見かけた。プレス作業は、重い機械を持ち上げる、といった力作業が無く、女性の器用さや、繊細さを活かせる仕事とのこと。手に職をつけたい女性が多くても、それに社会が応えることが出来ない中で、技術を武器に生きていくことは、やりがいがあるに違いない。


時代のニーズに合った新しさを影で支える職人の技術。最近の電化製品の進化が、あまりに速く、人間味を感じられずにいたが、それが、大きな間違いだったことに気がついた。どんな最新技術も、人の手によって作り出されるのである。そう思うと、冷たいアルミにも、温もりが感じられた。

取材・文 中嶋 真希


 

青柳 盛文(あおやぎ・もりふみ)

○山陽プレス工業株式会社
○本社工場 東京都北区滝野川6-12-4
○TEL:03-3916-0651/FAX:03-3916-0654
○HPアドレス:http://www.sanyo-stamping-i.co.jp/