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<<< まちを元気にする達人たちFILE073 奥山 峰石>>>
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人間国宝である奥山先生。「人間国宝」という偉業を成しえた先生を前に、私は少しばかり息を弾ませながら取材に挑んだ。 しかし、挨拶を交わすや、奥山先生の気さくな対応に私は驚き、重要文化財に囲まれて和やかな雰囲気の空間でお話を伺う事となった。 ■この世界に入るきっかけは? 「生きる為です。」正に、人間としてあるべき答えが返ってきた。 家庭の事情もあり、わずか15歳で親元を離れ、東京で弟子入りをする。東京に来ればどうにかなるだろう。少なからずも芸能界に憧れを抱いていた少年は、「生きる為」にこの仕事を始める。そこには、好き嫌いは存在しない。その仕事が合うか合わないではない。働く事である。懸命に働く。ただ、それだけである。 その辛さに耐えられるか耐えられないか。ただ、それだけである。 そして、耐え抜いて、その仕事をやり抜き通せるかどうか。それだけである。 奥山先生が、この世界に入った後に見つけた答えだ。 ■仕事に対する考え方 この世界に入って、今年で52年目を迎える奥山先生。 好きとか嫌いという区別をつけて仕事に就ける人は、そういないですよ。まして、10代や20代の若さで、そのことを見極めて仕事に就くなんて事は、よっぽど自分自身を見抜いている人でしょう。例え、自分が好きで入った仕事の世界に於ても、嫌な事はあるでしょうし。こんなはずではなかった、と思うこともあるでしょう。 外から見ている仕事と内に入って実際にする仕事は、180度違うはずです。 だから、「仕事」に対して言うならば、好き嫌いは無いと思っています。 何でも仕事は大変です。独立してから数年は、1年に2日しか休まずに働きましたよ。絶えず、仕事の依頼があったお陰とも言えますがね。 と、想像を絶するような台詞が出てきた。 ■人間国宝について 平成7年 重要無形文化財保持者認定 北区で初めての人間国宝に。 運と技と考え方が人間国宝になれた要因。 どんなに素晴らしい技術を持ちえても、それを表に出さなければ誰も認めてくれない。そして、それがどれだけ素晴らしい技術であるか、ということを証明するには作品を作り上げなければならない。その作品が認められたから、認定を受けたのでしょうね。と、奥山先生。 でも、職人のままだと人間国宝にはなれなかったでしょうね。と付け加えられた。 職人と作家の違いは何だと思います? と、逆に質問され首を横に振った私に説明をして下さった奥山先生。 職人というのは、人からの注文や依頼によって作品を創る。相手が喜ぶ作品を創る事に重点が置かれる。 作家は、自分でゼロからの発想によって、一つの創作を開始し、完成品は自分自身が満足の行く作品であると同時に、他人をも納得・満足させられる作品を創り上げられなければならない。 職人の作品は、注文者の目に触れるが、作家の作品は、発表することによって万人の目に触れる。そして、そこで評価が下される。 自分の作品を発表するだけに費やされる作家活動は、決して、金銭的に楽な仕事ではない。 きっかけは、オイルショックの時期に、仕事の依頼が日に日に減っていった。 来た仕事は、若い弟子達に少しでも回して生活の糧に、と思っていた奥山先生。 そんな折に、時間ばかりを無駄にもて遊んでいるのも勿体無い、と思い創作意欲を自分の作品創りに傾けたのが、作家になる転機であった。 職人から作家への転機は、プライドを捨てることから始まった。 プライドを捨てる事の困難さも、その過程に於て学んだという。 職人のままだと、自分の作品を売る事に躍起になって、自分の作品を残す術を知らずに終っていたと思う。と、奥山先生。 展覧会などに作品を発表する人達にとって、やはり、人間国宝になりたい。というのは、密やかな希望であり目標でもある。しかし、実際にその知らせを受けたときは、正直、嬉しいというよりも「驚き」の方が強かった、という。 他にもまだまだ多くの優れた作家がいるのに、どうして私なのですか?と、逆に質問をしてしまったくらいですよ。と、奥山先生。その時、奥さんにその知らせをしたら。 「お金がかからないなら受ければ」と言ったという。そのくらいの認識でしたよ、その当時は。と、笑い話として披露してくれた。 現在、段々と工芸技術の衰退が著しい現代。また、機械化が進む中、奥山先生は「これらの技術は、手作業です。何故なら、機械では出来ない、機械では不可能なことを手でやっているのですよ」と。 型を作る事だけでも、機械で作ろうとすると何千万円とかかるでしょう。また、模様を作るには何億という費用がかかるでしょう。でも、実際それだけの費用を投資しても、手で作った温もりや作り手の想いが投入された作品は出来ないでしょうね。 と、匠の技でしか表現できない真髄を伺った瞬間であった。 |
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■創作意欲 常に考えているので、自然とアイディアというのは湧き出てくるものですよ。 頭から離れませんね。 次に何を創ろうかな?と、考えているのではなくて、自然の中に身を置いている時に限らず、絶え間なく目にする物、耳にする物に対して五感を研ぎ澄ませ、「これは何に使えるかな?」と考えています。 形から入る時もあれば、模様から入る時もありますね。その時その時で、アイディアの使用方法は変わってきますが、例えば一つの模様を見たとき「この模様をどのようにして作品に生かすことが出来るか」等というのは、頭から離れませんね。と、奥山先生。 何か見たら、一つ必ずそういう発想を見つけてくる。という、既にライフスタイルの一つとして確立しているそう。 叉、人間国宝になってから作品に対する気持ちは当然の如く変化したという。 それは、一瞬だけれども邪念が生まれたということ。人間国宝という名に恥じない作品を創らなければならない、という気負いも生じた。 しかし、そうではなくて今まで通りに作品に愛情を込めて創ればいいことに気付く。つまり、今までだって努力をして作品を生み出して来たわけだから、それに、少しばかり違った想いが強くなっただけの事である。常に貪欲に自分の世界の確立に努めて来た奥山先生にとって、創作に対する気持ちの根本的な変化はない。 余談ではあるが・・・ 健康管理の為にしていた社交ダンスは、3年前に止め、現在はゴルフをすることによって、肩をほぐし気分転換を計っているという。 ■小学生に教えること 丁度、人間国宝になった前後だったと思います。と、奥山先生はきっかけになったエピソードの記憶をたぐり寄せながら、話してくれた。 西ヶ原小学校から、「伝統工芸に触れる」を目的とした授業が始まったらしい。その時に、小学校側から依頼の電話が北区の産業振興課にあったそうだ。丁度、その時奥山先生は他の用事でその課を訪ねていた。その課の代表の方から、「誰かいませんかな?」と尋ねられた奥山先生は、「では、私が行きましょう」と、たまたまそこに居合わせたこと、家が近い事を理由に、引き受けたのがきっかけであるらしい。 始めこそ、奥山先生の作品を見せたり説明したり、また、実演したりのみだったが…。 ある年の小学校の担当の先生の提案で、子供たちに作らせてみたい。ということで始まったのが、ここ3-4年のことである。実際、子供たちの反応は面白いそうだ。想像した以上に難しいという反応、数十回叩いただけで手が痛くなったのに、奥山先生は作品を創り上げるまでに、数千回と叩いているのだなぁ。等々・・奥山先生は言う。 私は器用ではなく、不器用だからこそここまで来れたのでしょうね。不器用だからこそ、必死で努力して「ああでもない、こうでもない。こんな作品を創りたい。こういう形にしたい。」と思いながらやってきましたから。そして、その努力のかたちが、いつの間にかたまたま他の人よりも上に行っていたというだけですよ。 奥山先生が語ってくれた印象的な言葉が有る。 これでいいと、満足してしまうと、そこで努力しなくなり自分自身も伸びてはいかない。 私は不器用だからダメだ、と思わないで長く努力をすること。1年悪くても5年悪くても、10年経ったら分からないじゃないですか。継続することです。 小学生のときに、あまり成績が良くないと言われていた人が、社長にまで伸し上がって大成している例はいくらもありますよ。頭の善し悪しは、その時の判断材料にはならないですよ。 ■鍛金とは? 金属の板を木づち・金づちで打ちながら器物を形作る。その作業は、金属の亀裂を防ぐため随時熱処理を加え、金属の柔軟性・弾力性を回復させながら行う。 鍛金の技術は、古くから仏具・武具・茶器などの制作に利用されている。 |
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取材・文 下瀬 文 |
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