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  コンクリートの達人/平田忠泰・越野有策 コンクリートの達人/平田忠泰・越野有策
平田忠泰
 

 
 越野建設株式会社で迎えてくれたのは、若き越野有策氏と、一杯引っ掛けてきたような笑顔で登場した平田忠泰氏。コンクリートの達人は、その実、現場監督で、建築に関しては全てに通ずる達人な方。初めに言った「達人ったっておれ、何しゃべったらいいかわからないんだよね」との言葉もご謙遜でおしゃべりに関してもそれはもう達人クラス。とそれに気づいた時にはもう取材は終わっていました。そのころにはコンクリートの硬く冷たいイメージとは程遠い、平田さんの暖かく柔らかい仕事への確かな熱が伝わってきた。

 打ちっぱなしという建築方法がある。コンクリート面が外壁の表面にさらけ出しているものである。その表面には3センチメートルほどの丸い溝のような跡がある。セパレーター(写真1)と呼ばれる金具の跡で、コンクリートの壁面を平らにとどめるため、板と板をつなぎ合わせる用途に用いられる、打ちっぱなし建築の特徴のひとつである。後日、セパレーターに注目して「打ちっぱなし」を見てみたが、なるほどその配置で外壁の印象というものはだいぶ違う。整ったものには、しっかり安定したものに感じる美しさがある。平田さんはその「セパレーター」の間隔までしっかりこだわって色々な工夫をこらしている。と、誇らしげに語ったのは越野さんでした。平田さんとは入社した最初の現場で出会い、それからの付き合い。平田さんが監督する現場を見て学んだのでした。

【セパレーター】(写真1)

 現場監督として、現場仕事に取り掛かる前に平田さんは全ての作業工程と日程計画を立てる。完成から逆算し、その人数と日数を出す。1つの建物を作り上げるのに、延べにしてひと月1500人もの人数が関わることもあるという。毎日およそ50人の動きを把握していなくてはならない。その苦労は大変だろうと思われるが、「大変じゃないよな」と平田さん。仕事をした後の特別な時間、仲間とのリラックスタイム、酒を飲む。仕事も酒も楽しむためには、緊張と弛緩、両方とも大事とのこと。充実した仕事の話題も酒の席では大事な肴。酒がうまけりゃ文句なし、とばかりにまた働く。最近関わった仕事では、北区は豊島にある豊島区民センター。(写真2)


【2人でともに「楽しんだ」仕事の1つ、豊島区民センター】 【R(カーブ)のある外壁】
(写真2)

 建築業界では地鎮祭から始まり、基礎、上棟式、と酒を飲む機会が多い。それはただ建築業界では酒好きが多いからという理由ではなく、命の危険がこの仕事にはあるからではないか。酒を飲み労をねぎらう、というのは、命を落とすことなく無事に一日働けたことへの感謝と安全への祈願がこめられているように思えてならない。イタリア人が陽気なのは「死を思え」(ラテン語でメメント・モリ)という言葉を枕元に置き、それゆえになにごとにも明るく楽しく取り組んでいる、という話を聞いたことがある。気づいていたかどうかは知らないが、平田さんは楽しいよな、あれは楽しかったよな、ということを何度も口にしていた。それは越野さんに促されたもので、二人は通じ合うようにうなずき合っていた。ちなみに現在越野さんは平田さんの上司とのこと。
見た目はイタリア人ではなさそうな平田さん。仕事への取り組み、個人個人との関わり、喜びの分かち合い、それらの姿勢や明るさは、どこから来たものか。

 小さいころ、宮大工をしていたおじさんのところに遊びに行っては作業を見たり、何かを自分で作り出したりしていたという。現在でも、職人のもとに行っては、どのようにやるか教わり、少しでもその仕事を覚え、できるだけ手を貸す。「分からないことは分からないままにしておくのではだめだから。」と簡単におっしゃったが、人の上に立つと、「分からない」と言うのはそんなに容易なことではないのではないか。しかし、この「分からない」の言葉で、誰からも学ぼうとする姿勢が、おじさんのところに遊びに行った小さい頃からこれまで、誰に対してでも謙虚でいられる秘訣のような気がした。平田さんと越野さんは友人のようであり、親子のようであり、師匠と弟子のようであった。同じ部屋の中にいながら、仲間になった気分と、間には入れないなという気分にさせられた。この絶妙な距離感。セパレーターへのこだわりに通ずるものか。

○ヴェージュコミュニティースペースのご紹介○ 
−環境としての建築とのふれあいを−
越野建設では地域住民の方々に、取材時にも使われたきれいなお部屋を貸し出しています。広さは56平米のワンフロアー。流し、トイレ完備。午前、午後、一日の3コースのそれぞれで料金がかかります。敷金、礼金等はありません。その他の詳しいことは越野建設ホームページへどうぞ。 http://www.e-koshino.co.jp
なお使用後にもご意見等ありましたら、同ホームページへどうぞ。2人の応援メッセージも随時募集しているとか。
 

取材・文 都丸 道宣


 
○平田忠泰(ひらた・ただやす) 
  役職:越野建設株式会社 建設部建築部長 
○越野有策(こしの・ゆうさく)
  役職:越野建設株式会社 取締役建設第一部長
○〒114‐0002東京都北区王子4‐22‐9
○TEL:03-3913‐4511(代)
○HPアドレス:http://www.e-koshino.co.jp